リーデルのワイングラスやデキャンタができるまで
リーデルのグラス工場を訪ねて
グラスの形状により、ワイン本来の風味を最大限に引出すワイングラスを開発している「リーデル」社。
工場はオーストリアに2工場、ドイツに5工場、チェコに1工場を保有していますが、今回はワイングラスの最高峰と称されるハンドメイドグラスで有名な「ソムリエ」と「デキャンタ」を生産しているオーストリア工場を訪れました。
ボヘミヤでガラス行商を初め、1756年に3代目がボヘミアでガラス工場を設立します。
最盛期には4,000人の従業員をかかえ、高い技術力を持つ企業へと成長し、第二次世界大戦では軍需産業にもガラスを供給していました。
1945年の大戦後、その高い技術に目をつけたソビエトによって、当時工場長だった8代目の「ワルター」氏が連れていかれ、9代目の「クラウス」氏も捕虜となってしまう。
しかし、護送される列車から命からがら飛び逃げ、オーストリアのスワロフスキー家に保護されます。
1956年、ソビエトから8代目「ワルター」氏が戻り、9代目と共にオーストリアのクフシュタインの地で新たな工場を作り、生産を開始。
1958年には4400/16(ブルゴーニュ・グラン・クリュ)を開発し、ロスチャイルド家に送ったところ、ロスチャイルドのワインには合わない返事が来てしまう。
1959年には4400/00(ボルドー・グラン・クリュ)を開発、以降開発を重ねて1973年には10種類を「ソムリエ」シリーズとして発表しました。
1986年に10代目「ゲオルグ」氏がヴィノムシリーズを発表。
2004年には、ドイツ有名グラスメーカー「ナハトマン」「スピゲラウ」社を買収し、8箇所の工場を所有。
年間5,000万個(ハンドメイドは500万個)を生産しています。
2001年に改装し、キレイで明るいイメージの工場。
250周年のモニュメント(パリのルーブル美術館を思わせるガラス張りのピラミッド)の下には、貴重なボヘミア時代のリーデル製品など陳列されていて、特に緑色はリーデルカラーとして有名だったとのこと。
予約なしで工場見学が出来るともあって、駐車場には観光バスも停まってる。
工場の中は、リーデルショップとオーストリアでチェーン展開しているワインショップがあり、グラステイスティングもできるし、コーヒーを飲むこともできる。
工場入り口で広報担当から軽く歴史説明をしてもらい、2階の見学スペースへ移動。2階へ上がる階段には、3代目の時にチェコに出来た最初の工場の絵が飾ってあります。
職人(グラス、デキャンタを製作する人)が働いている場所は、観光客なども2階から見学できるようになっているため、製作現場を見せる動線になっている。
また職人達も観光客の視線を意識せざるを得ないので、よい刺激になっていると思う。
ハンドメイドグラスはチーム制となっていて、1チーム5名で10チームあり、フル稼働で月2,000個を生産可能だそうだ。
グラスのステム・台座を製作するのが最も難しく、各チームの親方が担当している。
チームの5名は役割が決まっており、同じ仕事をし続ける。
- ■1人目
- 溶解炉から吹き竿に溶解した原料(種)を少し取り、小さく膨らまして冷ましておく。
- ■2人目
- 冷ました小さな膨らみに種を絡め取り、梨の木で作った道具を使い丸く成型、型に入れる前にも少し膨らましてから型へ入れて回しながら吹く。
- ■3人目
- 成型担当に合わせて型を操作。形が整ったら足付け担当へ廻す。
型は都度、水に浸け水分を含ませておく。(型が乾燥していると種が付きやすくなるため) - ■4人目
- 1が持ってきた足用の種をボウルに付け伸ばし、木型で成型する。
さらに種を付けて、台座を木型で成型。(一番難しいのでリーダーが行う) - ■5人目
- 吹き竿に付けたままのグラスを受け取り、冷却機へ移し、竿からグラスを外す。
2階から全体を見た後に1階に降り、職人達の目の前で細かく作業を見させてもらう。
今日は本来休みということで、2チームしか働いていなかったが、そのため職人達も余裕があり、親切に作業を見せてくれたのでした。