シャトーラギオール

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ワイングッズ雑学

ソムリエナイフの刃先 編

昨今のワインブームの中、ソムリエナイフを使われた経験のある読者の方も多いと思います。でも、そのナイフの「命」であるスクリューについて調べたことの有る方は、そんなに多くないのでは?ということで、ワインオープナー(ソムリエナイフ等)の刃先(スクリュー)についてお知らせしたいと思います。

現在、WACで取り扱いの主なワインオープナー(ソムリエナイフ)は、日本製、フランス製、ドイツ製、イタリア製、スペイン製の5ヶ国から構成されており、各国の特徴がナイフそれとスクリューにも存在します。まるでワインのように・・・。


スクリュー(螺旋針)の硬度

私見ですが、我が国 Made in Japan のスクリューは正直、Quality (品質) という点で他の4ヶ国には、かないません。
なぜなら、良いスクリューの定義を「コルクにスムーズに入りやすく、プロフェショナルのハードな使用環境にも伸びたり、曲がったり、折れたりしない」とするなら、欧州産のスクリューに比較して日本製は「柔らかく(ということは伸びやすい)、曲がりやすい」という事になります。

その理由は、刃先を作る工程中の「焼付け」、そして「焼戻し」といわれる部分に秘密があるようです。

「焼付け」とは、ただのスチール(鉄)もしくはステンレス鋼を硬くするために数千度の高温で焼く作業を言います。
でも、それだけでは硬いだけで逆に折れやすい性質になってしまうため、一度ゆっくり冷却したあともう一度、低温(といってもかなりの高温ですが)で焼付けるのです。これが「焼戻し」です。 それにより硬いだけでなく「しなやかさ」を併せ持つ性質のスクリューに変質するのです。

この工程はヨーロッパでも社外秘となっておりドイツのヘンケルス(Zwilling J.A. Henckels)社では「サブゼロ処理」と呼んでいるのですが、一度工場見学をした折も詳しくは見せてもらえませんでした。
その後、スイスのヴィクトリノックス(Victorinox)社や、イタリアのマニアーゴ、フランスはオーヴェルヌ地方にあるティエールとヨーロッパのコルク抜き修行を経験できたのですが、どこも作業工程の真髄は見せてくれませんでした。

残念ですが、日本では1社を除いてこの「硬度」の点で欧州産と比較して劣るようです。「しなやかさ」は充分なのですが・・・・・。

他の国はというと、ドイツは逆に「しなやかさ」よりも、かなり「硬度」の方にふっており、曲がったり伸びたりするより「折れる」傾向にあります。でもそれはコルクが堅いからと、こじったり変な角度で力を加えた場合のみです。大事にそして正当な使用方法ではほとんど半永久的に使えるほどの最高品質を誇ると言えます。

イタリアのスクリューは、かなりドイツに近い性質をもち近年においては、人件費コストの問題等でドイツゾーリンゲンの有名企業も下請けはイタリアの小さな会社ということが一般的なようです。

残りの2ヶ国フランスとスペインは国境を接することもあり頻繁にパーツのOEM供 給をやりあう間柄です。両国製スクリューは、現在のレベルでもっとも価格、品質の点でバランスがとれていると言えます。品質のをはかる上での基準2ポイント「硬度」そして「しなやかさ」のバランスということでは、工業大国ドイツ製をもしのぐ実力をもっています。

WACで取り扱いのソムリエナイフの中でも人気の高い「フランスSCIP社のシャトーラギオール」と、「スペインのプルタップス」の2種類は、かなりの本数が消費されるのですがそれに反比例してクレーム率は驚異的に低い真の「良品」であると断言できます。

ちなみに、100円ショップにも出現している中国製ソムリエナイフ&コルク抜きは、品質の点で劣悪としか言えない粗悪品が多く、中には太い針金(生鉄=なまてつ)とほとんど変わらない商品も存在します。ご購入の時には充分ご注意下さい。(ボディ部分はOKの商品もあるのですが、いかんせんスクリューが×なのです)


スクリューの重要な要素

「硬度」のほかにスクリューの重要な要素は以下となります。

・スクリューの螺旋(らせん)部分の巻きの数
・巻きのピッチ(間隔)
・先端部分のするどさ
・先端部分の終点位置
・スクリューそれ自体の太さ
・仕上げの加工
・ミゾ加工があるか否か

螺旋部分の数は以前、ドイツのヘンケルスやドライザックに代表されるようにドイツゾーリンゲン製が全盛の頃は4巻きスクリューのソムリエナイフが主流でした。が、今では市場でもっとも流通していると思われるイタリア製、スペイン製、フランス製のどれもが5巻きスクリューを採用しています。
4巻きに比べ5巻きは、以前よりピッチ(間隔)が狭く、スクリューそれ自体の太さは若干ですが細くなっているといえます。

これは、あくまでも私の私見ですが、グランヴァン等のロングコルクを抜きやすくする工夫では?と考えます。フック部分とのバランス、スクリューが柄(ボディ部分)に付いている位置にもよるのですが、長い5巻きの螺旋を持つスクリューの方が、コルクを引き上げる率が大きく、さらに若干でも細いほうがスクリューインする時の抵抗が少ないといえます。

ここでついでにスクリューがコルクに入るときの「抵抗」について書くと、スクリュー部分にミゾがきってある方が、抵抗が少なく、また黒くスクリューにテフロン加工しているのも錆止めの効果と同様、ミゾ加工と同じく抵抗減に役立っていると言えます。

ピッチ(間隔)の点でいえば、間隔が狭いほど、コルクにスクリューインするとき堅く、抵抗を感じます。逆にコルクを引き抜く時は、コルクにしっかり食い込んでいる分軽く感じるのです。

最後は、スクリューの先端部分についてです。
先端が、尖がっている方がポイントしやすく、コルクにスムーズに入っていくのは、誰でもわかると思います。問題は、先端の終点位置です。
右図のように正面からみて終点位置が内径にそってピタッとおさまっているのがノーマルであり、安物のソムリエナイフでは、外側に終点がきているものがあります。これだとコルクにうまく食い込んでいかず、内部でコルクを破壊しながら食い込んでいくので、いくら最初にうまくポイントできてもきれいには抜けず、コルクがボロボロになることさえあります。

100円ショップなどで扱われる中国製のソムリエナイフのスクリューは、硬度のみならず、終点の位置、はたまたスクリュー螺旋の直径さえバラバラの粗悪品が目立ちます。
購入される際は、くれぐれもスクリューをよく観察して下さい。

以上「オタク」的なことを書いてしまいましたが、プロのソムリエにとって武士の刀とも言えるソムリエナイフもスクリューの出来如何では、切れ味鋭い「名刀」にもなれば見せかけだけで、まったく役立たずの「竹みつ」にもなってしまうのです。

みなさんも、お店にいって一度スクリューをじっくりながめてみればいかがでしょう?
そしてできれば、実際に使ってみるのが、自分に最適の「マイソムリエナイフ」を見つける一番の方法なのです。(これまたワインと一緒!ですね)



著者:ワイングッズの買付けを約30年間、世界各国で行っているWAC社長



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